後継者

2012 年 6 月 4 日

 スタンドが蒼に染まるのが早かった気がする。スタジアム全体にひびく「君が代」斉唱にも心なしか、力が篭(こも)っていた気がする。
 普段とちがう戦いこそがW杯最終予選だということを実感する試合前だった。選手も相当な気合いが入っていたが、スタンドにいる63,551人のファンも負けてはいなかった。

 6月3日、ブラジルW杯アジア最終予選第1戦が埼玉2◯◯2で行われ、オマーンを3-0で一蹴した。『何が起きるか分からない最終予選』といったフレーズすらかき消す、一方的な試合展開だった。
 試合前、長友佑都がゴール裏のファンに向かい、かるいお辞儀をするとスタジアムはおおいに沸く。その熱のまま試合に入ると90分間、主導権をゆずることなく試合を制した。

 学生生活に例えるならば、サッカーにかぎらず部活やクラブチームでは「強かった“代”」とよく云われる。
 そんな強かった代が、しかも地域最強になった代が久しぶりに顔を揃えた試合だった。小さな連携ミスはあったにせよ、攻めつづけ、攻めさせなかったのは大いに評価できる。

 ただ、気がかりなのは、強くなりすぎた集団の末路である。それが「監督で」なのか、「選手で」なのか、はその国のアイデンティティによるところが大きい。

 今秋、対戦が決まっている強豪国フランスの場合、選手の衰退がそのままチームの弱体化を招いている。ミッシェル・プラティニ、ジネディーヌ・ジダンというレジェンドが去ったあとは壊滅的な末路をたどっている。
 現在は、ジダンとともに黄金期を築いたDFローラン・ブランがチームを率い、20連勝中という勢いをみせており、6月8日に開幕をむかえるユーロ2012でも楽しみなチームの一つである。

 たとえ『何が起きるか分からない最終予選』であったとしても、ベストメンバーで戦えばアジアを圧倒できることが、この試合ではっきりした。
 ならば、早急に手をつけなければならない問題は、まちがいなく遠藤保仁の後継者探しの一点に尽きる。


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