最後

2012 年 5 月 10 日

 どんな名選手も歳月の流れには逆らえない。

 インテル・ミラノに13年所属し、チームの暗黒期と、そして黄金期を知り、数々のチームタイトル獲得に貢献したイバン・コルドバが現役引退を表明した。全盛期はイタリア中の主審から「ファウルの基準」とまで賞賛された名DFは今季限りで、選手としてサッカー界から身をひく。

 5月6日、イタリア・セリエA首位ユヴェントスを勝ち点1差で追いかけていたACミランは、同じ街に拠点をおくライバルチーム、インテル・ミラノにダービーで4-2というスコアで敗れた。

 どこの国の、どこの街でも行われるダービーマッチは、意地と意地がぶつかりあい試合は荒れる傾向にある。イタリアミラノに拠を置くミランとインテルのダービーは人気、実力とも世界屈指である。ファンの熱も尋常ではない。時に、スタンドから投げこまれた発煙筒がGKに当たる悲劇もあったほどだ。
 インテルのレジェンド選手が過去に『ミラニスタになる位なら、敗者になった方がマシだ』と言うくらいに、両者は犬猿の仲にある。

 今回の試合も前半、ミランに与えられたPKのシーンでFWズラタン・イブラヒモビッチとGKジュリオ・セーザルの“やりとり”は目をひいた。心理戦といえば格好はつくが、あまり褒められた行為ではなかったのも事実ではある。

 その行為が影響したのか、前半終了時にロッカールームに引き返す道中でも両チームいざこざは続いた。コーチを巻き込んでのいざこざに、ひときわ身体の小さな選手が仲裁に入る。チーム副キャプテンを務めるコルドバである。かつては欧州チャンピオンズリーグの試合後に相手選手に挑発され、その場で選手を追い回し、数試合出場停止をうけた狂犬も現在ではチームの仲裁役である。

 守備に戦術のおおくを費やすセリエAで、身長173cmは小柄に属する。俊足FWに劣らない脚力に加え、タイミング抜群の脅威的なジャンプ力、イタリア中の主審から『ファウルの基準』とまで賞賛されたクリーンなDFは今年8月で36歳になる。
 1歳年上にあたる若き監督アンドレア・ストラマッチョーニの粋な計らいで後半39分から最後のミラノダービー、最後のスタディオ・ジュゼッペ・メアッツァのピッチに立ち、最後の勝利を味わう。

 試合後、インテリスタが陣取るゴール前での胴上げは、なんとも感動的な気分にさせられた。
 ファウルの基準の一時代を作った男は、今季スパイクを脱ぐ。


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