素行

2012 年 4 月 25 日

 たとえ、ボクシングに興味がなくともマイク・タイソンの名は誰でもご存知ではないだろうか。もし、タイソンの私生活が崩れなければ、あのモハメド・アリに肩をならべるキング・オブ・キングスになれたのではないだろうか。個人的にそう確信している。

 サッカーにおいて、そのチームを象徴する選手がペナルティキック(PK)を外すのは珍しいことではない。
 時に劇的に、そして残酷に。

 ペナルティで得たはずのPKは、ときに重い十字架を選手に背負わせる。過去、名だたる選手がはずしてきた。プラティニ、ジーコ、バッジョ、テリー、そしてメッシ。

 日本時間25日3:45欧州チャンピオンズリーグ(CL)準決勝・バルセロナvsチェルシー第2戦が行われ、2-2の同点で試合を終えたが第1戦を1-0で勝利していたチェルシーが総得点3-2でバルセロナを上回り、5月19日にドイツのミュンヘンで行われる決勝戦に駒をすすめた。

 前半35分にバルセロナ先制で試合がうごくと、その2分後チェルシーの主将をつとめるジョン・テリーがボールに全く関係ない状況でバルセロナFWの背中に膝蹴りをいれる愚行をはたらく。
 試合後、『故意ではない』と本人は弁解するが、あれが故意でなければこのイングランド人はスキップをしながら歩く人間のようだ。

 チェルシー生え抜きでチーム一筋のテリーに対し、個人的に特別な感情をいだいている。
 2008年、モスクワでのマンチェスター・ユナイテッドと欧州一を争ったCL決勝戦は1-1のままPK戦まで試合はもつれた。ミュンヘンの悲劇から奇しくも50年目を迎えたユナイテッドに軍配があがる試合なのだが、決めればチェルシー初優勝という場面でテリーが足を滑らし、PKを失敗してしまう。人目をはばからず泣くテリーに多くのかたが同情したのではないか。
 雨は降っていたが、テリー以外は足を滑らさなかったPK戦に『ユナイテッドの精霊がチームを助けた』と現地メディアは最大級の擁護をしたのをよく覚えている。

 このシーズン、チェルシーをイングランドの、そして欧州の強豪に育て上げたジョゼ・モウリーニョがチームを去り、残された選手たちが力を合わせ辿り着いた舞台でチームの大黒柱がはずしたPKは劇的で、そして残酷だった。

 その後、自身「最高の指導者」と公言するモウリーニョがチームを去ってからテリーは素行のわるさは目立った。人種差別発言に不倫問題といったニュースを聞いて、好意的な印象を抱ける人間はまずいないだろう。

 カス・ダマトが去って、選手として崩れたマイク・タイソンを思い出す。

 選手にかぎらず、人間の素行は行動に現れてしまうものである。ふだんの素行が悪くなければ相手の耳に噛み付いたり、背中に膝蹴りを見舞ったりはしないだろう。

 26日、仮にレアル・マドリードがバイエルンに勝利したとしても決勝戦のチェルシーにテリーの姿はない。だが、唯一の救いはカス・ダマトはこの世を去り、タイソンは自分を見失ったが、モウリーニョはチームを去っただけだという事である。

 人間に挽回する機会が必ずあるように選手にだって当然、訪れる。歴史を創ってきた選手は、ファンの記憶に残るPKをかならず決めてきた。
 テリーはもちろん、この試合でPKを失敗したメッシの今後にも期待している。


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