品格

2012 年 4 月 16 日

 坂東 眞理子さんの著書「女性の品格」が一大ムーブメントになったのは記憶に新しい。
 ひと昔前に熟読させて頂いたが、内容は女性だけのものではなく、男性にもおおくが当てはまる一冊でもある。この本をきっかけに「品格」と名のついた書物が飛ぶように売れたそうだ。内容はおもに女性としての立ち振舞いを中心に具体的にアドバイスした作品だが、個人的に「大人の品格」としても、と勝手に考えたものだ。

 14日に行われたイタリア・セリエB第35節、ペスカーラ対リヴォルノの一戦で悲劇が起きた。リヴォルノMFピエルマリオ・モロジーニが33分、突然グラウンドに倒れた。一度は立ち上がったものの、数秒後に再び倒れ込み救急隊がピッチ上で心臓マッサージを施し、救急車で病院に搬送されたが、そのまま帰らぬ人となった。
 謹んでご冥福をお祈りします。

 先日、イングランドプレミアリーグ・ボルトンに所属するムアンバが九死に一生を得たが、今回は最も不幸なかたちで25年という若さで人生を終えた。

 近年、増加しているこのような不幸がなぜ起きるのか。
 過密日程もさることながら、個人の体質、遺伝、そして体調管理がおおきく挙げられる。死者に鞭(むち)を打つような行為だが、ピエルマリオの体調は試合前のコンディションはいかなるものだったのか。

 ボクシングや格闘技に代表されるような、試合前の審査はサッカーにはない。オートバイや車を運転する者が飲酒運転を禁止されているような基準もない。チームを率いる監督が先発に選び、選手が断らなければ無条件で試合に出場できる。

 どこか間違ってはいないか。

 結果論であれこれ言ったところで、死者は決して蘇らない。ならば、そんな時だからこそ改革を求めたい。
 現在の選手管理では、当たり前になっている「採血」がある。採った血液から疲労はもちろん、緊張状態までが解ってしまうそうだ。言動や表情は誤魔(ごま)化しがきいても、身体はいたって正直にものをいう結果だ。

 その正直さに着目したい。試合前に採血検査を設け、基準に達しなければ出場は認められないルールを作れば、事故は未然に防ぐことは出来るし、疲労が溜まっていれば血液にも露骨(ろこつ)に現れる。疲労が溜まっていれば、無論、怪我もしやすいのは承知の事実である。

 昨今イタリアは、UEFAクラブランキングでドイツに抜かれ、欧州一を決めるチャンピオンズリーグ(CL)出場枠が4チームから3チームに減少された。
 この事実を受け、外国人枠を減らし、自国選手により多くの出場機会を与える方針をとっている。その甲斐あってか、今季のCLではベスト16に3チーム、ベスト8に1チームが勝ち進んだが、2年連続でベスト4には1チームも残れなかった。世界最強と呼ばれた時代には遠く及ばない結果だ。

 強くなるために改革が必要なのは言うまでもないが、人命よりも必要とされる強化などない筈である。

 ピエルマリオの訃報をうけ、イタリアサッカー協会は全日程の延期を決めた。個人的に致し方ない結果に思うが、そう思ってない方もいらっしゃるようだ。
 週末の楽しみを奪われた気持ちは分からなくはないが、自身の楽しさをもたらせてくれるサッカーの、サッカー選手が試合中に亡くなった事実をいかに受け止めているのか。
 品格はもちろんだが、人間性も疑ってしまう。


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