文化

2012 年 2 月 20 日

ミラノから電車に揺られること2時間、田園風景であろうその場所は雪で覆われている。度重なる試合延期も納得させられる。
トリノに到着し、荷物をホテルに預けトラムに乗る。クッション性の欠片もない椅子、カーブを曲がる度に体に大きな重力を受ける。スタジアムが近づいているのだろう、乗客にも色が出始める。建物の影から姿を表す。想像を大きく上回る迫力に息を飲む。

スタディオ・デッレ・アルピ改め、ユベントス・スタジアムである。
今シーズンからユベントスのホームスタジアムとして使用されている巨大な建造物は想像をはるかに凌ぐものだった。
露店が軒を連ね、賑やかな雰囲気が作っている。試合開始までの時間を潰すには十分過ぎる程、広いショッピングモールがある。中にはユベントスストアーがあり、ユニフォームを始めとするグッズが揃っていた。
路面店で買えば、オフィシャルの四分の一ほどの価格で手に入るのだが、チームに貢献できる喜びをティフォージは選んでいる。店内の混み方も徐々に身動きも自由に出来ない程になっていく。

20:45試合開始なのだが、19:00になっても門が開かない。空いたのだがチケット表記があまりよく分からず、並んでいたゲートではない事を知る。重要な情報は小さく、相手チームの順位の表記のほうが大きい。

セキュリティチェックを抜けるとスタジアムの壁には歴代のレジェンドのパネルが飾ってあり、懐かしい気分にさせられる。売店は勿論だが、テントも設けられており、中では親子や友達同士でサッカーゲームを楽しんでいる。ジャンケンで勝った者がユベントスを使い、負けた者がこの日の対戦相手のカターニャを使い、楽しんでいた。

スタンド席に行くと急勾配に驚く、日本では確実に消防法にひっかかる位に急だ。
座席にすわり、感慨に耽っていると指笛が聞こえる。カターニャファンとユーベファンが小競り合いを繰り返し、黄色やオレンジ色のベストを着た警備員が割って入る。

指笛から温かい歓声に一変する。

オーロラビジョンに選手を乗せたバスが到着した模様が映し出される。少し経つとスーツ姿の選手たちがピッチの状態を確かめに入って来ると大きな声援で迎えられる。中でも監督を務めるコンテは一人、センターサークルまで行き両手を高々とあげ拍手をした時の大歓声は凄まじかった。

5.4.3.とオーロラビジョン上でカウントダウンが始まると0になった瞬間、選手がウォーミングアップの為、入場して来る。会場は勿論、爆発的な声援を贈る。ダッシュからボール回し、全員がシュートを打つ中、ピルロだけがコーチと確かめるようにロングボールを蹴る。どのボールもコーチのひざ下に寸分違わず届く。

選手入場の際、テレビ中継で耳にしていた歌のイントロが始まり、スタンド席を埋めたファンは総立ちで歌う。選手冥利に尽きる歓迎のなか試合が始まる。
開始早々に失点を許すがファンの誰もが気落ちする事なく、大きな声援を送り続ける。相手サポーターが応援し始めると一斉にブーイングを浴びせる。
ピルロの直接FKが決まった時は爆発した。今季いまだ無敗を続けるチームにとって待望の同点弾に皆が歓喜した。後半に逆転、追加点を奪い幸運とも呼べる試合を観戦できた。


日本でよく云われる『欧州はファンがサッカーをよく知っている』『ホームとアウェイの差が雲泥』などと云われるが、よく理解できた。
試合中、スペースに走りこまない選手に指し大声で叫び、スペースに走りこんでもボールを出さない選手には軽い怒号を浴びせる。流れを切ったディフェンスには『グランデ!』と叫び、大きな拍手を贈る。
試合展開が膠着すると声でチームを盛りたて、得点が入った時の相手サポーターへは慈悲も感じさせないアクションで萎縮させる。

文化になっている国のワールドカップ優勝国のサッカー感を体感し、日本が歩むべき道は未だ厳しい事を知る。

チームに対し、サッカーというスポーツに対し、少しばかり病的で、小さくない信仰を感じさせられた。


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