不思議

2012 年 2 月 7 日

 5日、シリアの緊迫状態を考慮し、中立地ヨルダンで2012年ロンドン五輪アジア最終予選・第4戦のシリア戦が行われ、2対1でU-23日本代表は敗れた。

 『勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし』

 この試合は野球界の重鎮である野村克也氏が語った、この言葉に集約されているのではないか。
 このチームの場合、先制される事は珍しくはなく、先制されてもひっくり返せる力を持ち、幾多の試合を勝利してきた。何故か勝てる、何故か勝ってきたチームが、この日負けた。
 何度もFW永井謙佑に助けられ、勝利してきた不思議は敗北という現実を受け、今後どう影響を及ぼすのか。

 『結果に貪欲に』と語っていたFWは貪欲に勝負すべき場面で、何度も味方にパスを送り続け、好機を逸し続けた。2年前の立ち上げからチームを知る大黒柱の選手は、試合勘が戻らないのか、目を覆いたくなるミスパスを連発した。現代サッカーの生命線ともいえるポジションで、あれだけミスを繰り返しては攻撃が成り立つはずがなかった。

 海外組の招集もうまくいかず、エース清武弘嗣の直前離脱、試合序盤の山崎亮平のアクシデントがあったとはいえ、共通理解を感じない攻撃に終始する。

 28年間、閉ざされてきた五輪出場という扉を、死に物狂いでこじ開けたアトランタ世代から早16年が経つ。
 ノルマとなり、義務となった五輪出場は小さくない重圧に変わり、過去に試合後インタビューで涙を浮かべ、話す指揮官もいた。新たな五輪が近づく度に弱体化が叫ばれ、迎えたロンドン世代はいつになく最終予選のグループに恵まれた。
 その恵まれたグループでの「出場黄信号」は驕った結果の表れだろう。

 シリアは強かった、確かに強かった。
 負ければ1位通過が絶望的な状況で90分間攻め続けた。皮肉にも、結果に貪欲に攻め続けたのは日本ではなくシリアだった。最後まで諦めない気持ちが乗り移ったかのような渾身のロングシュートが新たなU-23日本代表の目覚めになる事を信じたい。


 GKグローブが国の情勢を表しているようだった。

 白色が深いクリーム色になり、何年使用しているか分からない程に使い込まれたシリアGKアルマのグローブは権田修一のグローブからは感じることのない切迫した国情を表しているようだった。

 スポーツが希望や力を与えてくれるのは3・11を経験した我々はよく知っている。だからこそ、3月29日のKAZUのゴールは、例えチャリティーマッチとはいえ大きな価値があった。
 5日に行われたこの試合、シリアの若者たちは同じものを背負って戦っていただろう。

 だからといって国を背負い戦う国際試合において、負けていい試合などない。
 少しばかり遠回りし、苦労して手にする五輪切符の方が、目的地ロンドンをより良い形で戦える、と考えても不思議ではない。


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