門番

2012 年 2 月 5 日

 人を叱りつけるには絶対的な勇気が必要不可欠である。

 ゴールキーパーというポジションは体の大きな人間が任されるものだと思っていた。
 誰の記憶の中でも小学生の遊びの時間にGKを任される子供は体が大きかったのではないか。

 縦に、もしくは横に。

 だが、川口能活という日本人が現れ、選手権優勝までをテレビで観戦していなければGKというポジションに対して、小さくない偏見があった。
 その後、映像でシュマイケル、ペルッツィといった選手を見て、俗にいう「世界トップクラス」を知る事となる。

 当時の世界指折りのGKと比べ、確かな差は感じるものの、28年ぶりのオリンピック、初のW杯出場を懸けた死闘の数々を戦いぬいた川口は、世界のスター選手と比べても、何ら遜色ないほどに観る者を魅了し、チームの勝利に大きく貢献し続けた。

 個人的にGKというポジションの重要性を日本にプレーで体現した、第一人者だと考えている。感情を剥き出しに怒鳴り、ロスタイムでの失点にピッチを何度も地面を叩く、若き日の川口の姿を記憶に残っている方も多いことだろう。

 『うるせぇなぁ』

 彼は常々そう思っていた。
 高校時代、川口と共に数々のタイトルを手中にしたFW安永聡太郎は一つ上の先輩GKに対し『うっとうしい存在だった』とプロになって語る一方で、スペインに移籍した際『川口が正しかった』とも語っている。
 そう思ったのは練習の際、ミスに限らず鳴り止まない怒号、国籍は違えど相手が怒ってるか、否か、分からなければ海外でやっていく上で、選手の前に人間としても難しいだろう。
 日本とスペインには勝利に対する温度差が確かにあった、と語る。欧州は勿論のこと、南米の選手に至っては一家を支えるためにプロサッカー選手という職業を選ぶ事に命を懸ける、その選手たちと比べた場合、温度差が出ない訳がない。


 ロンドン五輪を目指すU-23日本代表の主将を務める、権田修一が練習試合の前半を0-0で折り返し、ヘラヘラ笑う攻撃陣を一喝した、というニュースを目にした。
 個人的に評価したい。だが、一方で怒られた選手たちは権田に対し、どういった感情を抱くか。
 権田の守備で助けられた試合は数知れない。だからこそ許せる。だが、ミスが許されないポジションで、ミスした時のダメージは計り知れないものだろう。
 繰り返すが、怒るには勇気がいる。そして一歩間違えればチームの空中分解も免れない。その環境下で一喝するキャプテン権田は頼もしく、そして強い男だと評価できるのではないか。


 先日、時事通信社の記者が選ぶ「日本代表暫定歴代最強イレブン」を拝見した。

 DF、堀池巧、井原正巳、中沢佑二、長友佑都
 MF、木村和司、中田英寿、遠藤保仁、中村俊輔
 FW、釜本邦茂、三浦和良

 個人的に異論はない。勿論、GKには川口能活が選出されている。
 近い将来、川口を超える存在になれるか否か、およそ10㎝ほど背の高い権田には期待をせずにはいられない。

 権田の熱さは他に届いているのか。
 2月5日、勝てば五輪に王手が懸かるシリア戦、熱の伝導率を確認する一方で、権田のプレーにも目を凝らしたい。


コメントをどうぞ