潔癖

2012 年 1 月 13 日

 W杯制覇がなければ獲得はなかっただろう。

 どんなに才能に恵まれたとしても獲得には至らないのが澤穂希が獲得したバロンドールという賞なのだ。
 連日、男女通じて初のアジア人選手がバロンドール獲得というニュースに騒然となっている。


 このタイトル獲得にはその年の欧州での活躍、またはW杯での功績が必要不可欠である。
 日本人で、最もバロンドールに近づいたのは中田英寿氏が先ず、挙げられる。中田氏の活躍がその後の日本人海外進出を後押しした、と言っていいのではないか。
 信じがたい身体能力もない日本人が欧州スカウトの目を集めるキッカケを作った。
 中田氏以前は奥寺康彦氏が挙げられるが、奥寺氏の出現の「後」が続かなかった。奥寺氏が引退した1988年から10年もの年月を擁し、奇しくもその年にW杯初出場し、活躍が認められ中田氏は欧州に渡っている。10年という遅れがW杯出場の遅れとも言い換えることも出来る。
 W杯の活躍が認められての獲得が主なこの賞だが、W杯が行われない年では所属クラブでの活躍、昨今では欧州CLの活躍が大きな目安となっている。

 W杯、CLの活躍が認められるべき賞であるバロンドールなのだが昨年のバロンドールは大きな疑問符が残った。
 両大会で活躍したオランダ代表のウェズレイ・スナイデルが落選し、CLでもW杯でもタイトルに至らなかったリオネル・メッシが獲得してしまう。
 広い世界の誰に聞いても、メッシの才能に疑問を挟む者はいないだろう。
 だが、W杯イヤーの受賞者はW杯の成績を反映しており、成績と無関係の選手の選出は過去になかった。

 欧州では「FIFAと統合しバロンドールは汚れた」と囁かれ、極東の我が国でもバロンドールに対し大きな不信感を覚えた方々も多い。

 代表監督、代表主将、記者の投票数さえ多ければ、獲得できるこの賞も過去を振り返ってみると、どこか欧州特有の偏見が邪魔している気がしてならない。
 黒人選手が獲得することが圧倒的に少なかったこの賞もエウゼビオが1965年に獲得してから40年後の1995年、UEFAに加盟するクラブでプレーをしていれば国籍を問われないようになり、ジョージ・ウェアが獲得に至る。
 日本でも馴染み深いアーセン・ヴェンゲルに見出されたこのリベリア人の獲得には『彼の人間性も含まれている』と最大の賛辞を贈っている。

 その中、未だ人種差別が蔓延る欧州主体のこの賞に黄色人種が選出されたのは大きな一つの垣根を越えたのではないか。

 現欧州サッカー協会会長のフランス人、ミシェル・プラティニは選手時代に意味深な発言を残している。
 『サッカーに人種はない。下手な白人ほど黒人を差別する』

 欧州のそれが凝縮された一言であり、長い年月をかけても未だ解決には至ってはおらず、残念なことに約1カ月に1回のペースで耳にする。
 そういった意味で女子の部門で澤が獲得したことで活躍次第で獲得できる元来の賞になったのではないか。
 もともと男子の部門が有名な賞だが、昨年を境に多くの方が興味を失った賞になってしまった側面が残る。

 女子の部門だけでも未来永劫の潔癖を貫いて欲しい。


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