温度

2012 年 1 月 7 日

 優しい拍手だった。
 過去に類をみない優しい拍手が起こった。

 7日、第90回全国高校サッカー選手権大会準決勝が行われ市立船橋(千葉)が大分(大分)を2-1で破り、四日市中央工(三重)が尚志(福島)を6-1で破り、市船と四中工の名門同士の決勝戦が9日おこなわれる。

 17年もの年月を日本で過ごす博識の外国人ジャーナリストが日本のサッカー界に『コーナーフラッグから離れよう』と警笛を鳴らす。文中には「これはサッカーの精神に反する行為である。本当に恥ずべき行為として指摘されるべきであり、日本サッカー協会とJリーグは非難すべきだ」とある。

 全くの同意である。

 面白いサッカーをしようがしまいが試合終了の笛までに得点を多く入れたチームが勝つのがサッカーというスポーツである。
 試合終了間際にリードしているチームが相手陣地コーナーフラッグまでわざわざボールを運び、時間稼ぎをする行為を指す。
 攻めてカウンターを喰らうより、守りを固めて耐えるよりは時間稼ぎをしたほうが当然、楽である。極端な言い方を許して貰えるなら「得点を許すのならファウルをしてカードを貰うほうが」と言っているのとさほど変わらない。識者の言葉を再度お借りするが、本当に恥ずべき行為なのは言うまでもない。
 勝てば万事OKというのならば、サッカー人としても人間としての成長も見込めないのではないか。少なくとも私はそう思う。

 文の最後はこう締めくくられている。「ホームのサポーターは、彼らの選手が最後まで戦わずに臆病にもコーナーフラッグへと走っていったなら、野次を飛ばすべきだろう」。決勝戦を前に新たな期待が膨らむ。

 今大会は「超高校級」と大会前から騒がれる選手はいなかった。将来になってヒーロー不在の大会と呼ばれるのかもしれないが、福島県民の想いを背負い、福島県勢初のベスト4に進んだ尚志高校こそ、私は今大会ヒーローに挙げたい。
 いわれのない差別もあっただろうし、放射能を懸念しての練習、今後も福島県スポーツ界、行政を取り巻く状況は依然として厳しい。新年を迎えても暗い気持ちになるそんな中、福島県勢初のベスト4は県民に本当の意味で勇気を与えたのではないか。

 試合は地力に勝る四中工が試合を優勢にすすめ0-4になった時、尚志の勝利を望めず、多くの方が席を立った。その後、一矢報いるものの追加点を許し、6-1で大敗し初の決勝戦への扉は閉ざされた。4-0、6-1になっても攻め続けた四中工に真の勝者をみる。

 私の知る限り、国立競技場の舞台に辿り着き大敗したチームを観客が最後の最後まで見守った記憶はない。いた年はあったが、今日ほど多く残っていた事など当然なかった。

 表彰式を終えても尚志高校サッカー部が応援席に一礼するまで数多くの方が見守り、温かい拍手を贈っていた。
 福島県民の方も当然いただろうし、そうでない方々も必ずいた筈だ。
 心優しい日本人たちがそばにいる事を決して忘れないで欲しい。

 9日、決勝戦が行われる訳だが終了間際に時間稼ぎをするようなチームには優勝して欲しくはないものである。


コメントをどうぞ