勝負事

2012 年 1 月 7 日

 トーナメントを勝ち登る術。
 確かな力は勿論だが、最後まで諦めない気持ち、こぼれた小さな幸運を逃さないこと。
 残った4校をみると、ついそんな事を思う。

 5日、第90回全国高校サッカー選手権大会ベスト8が行われ、四中工(三重)、市船(千葉)、大分(大分)、尚志(福島)が夢の舞台、国立競技場に辿り着いた。

 埼玉2〇〇2では2試合行われ、第一試合は市立西宮(兵庫)と大分、第二試合は桐生第一(群馬)と尚志(福島)が夢の舞台への切符を懸けて戦った。
 市立西宮と大分の試合は「2-0でリードしている時が一番危ない」というサッカー界の定説を説明するかのような試合展開だった。

 前大会王者を県予選で倒した市立西宮の力は本物だった。
 中盤の底から正確な長短のパスで試合を作る難波祐輔の存在が際立つ中、後藤寛太の美しいループシュートで2-0とする。その後、大分に危ない場面を作られるが何とか凌ぐ。
 2-0とリードする中、前半終了間際の34分に大分がFKから1点差に詰め寄る。後半8分に同点弾を許す。試合開始と終了の時間帯を指す「魔の5分間」とも「魔の10分間」とも云われる時間帯での失点は万国共通の定説通りの結果となってしまった。

 1回戦10-0、2回戦3-1、3回戦1-0で競り勝てる大分の力もまた本物だった。大会が始まって初の先制点、追加点を許しても動揺はなかった。縦に速く攻める攻撃は迫力があり、後半35分、ファウルによって逆転ゴールが取り消されるシーンがあっても、醜い不服を言わず、腐らなかったのが観ていて清々しい気分にさせられた。
 39分、正真正銘の逆転ゴールが決まるわけだが0-2からの逆転は10-0の試合が出来る得点力の高さが存分に伺える強さであった。
 準決勝でたとえ先制されても諦めない試合展開が期待でき、多くの識者が優勝候補に推す市船戦は熱戦が期待できそうだ。

 日本人高校生FWに「レアル・マドリーが興味」そんな時代になった。

 鈴木武蔵、U-17日本代表で50mを5秒9の俊足を持ち、184cm75kgの身体を持つ近年稀にみる逸材である。公式記録も誤りでは、と思う程に巨大な17歳は尚志の高い守備意識の前に最後まで持てる力を発揮できなかった。
 全国区の強豪である前橋育英を退け、初の選手権という舞台で鈴木は躍動する。初戦で3-0と全得点を叩き出すと3回戦は4-1、自身は1得点とチームの勝利に貢献、個人的に楽しみにしていたがチームの選手層の薄さを露呈する結果となってしまった。試合直前、試合中にと2人の主力を欠き、本来の布陣で大一番に臨むことが出来なかった。

 この日、左サイドに張ることが多かった鈴木だがチームメイトと話し合い、中央や右サイドに流れる動きが欲しかった。確かな逸材に敢えて厳しい事を付け加えると、厳しい台所事情は分かりきっていたのなら、ボールを引き出せるFWになって欲しかった。

 試合中、味方サイドバックがボールを持った時、手を挙げ何度もDFライン裏に呼び込む素振りを見せていた。自信が見て取れる場面だったが、対角線の向こう側に最後まで良いタイミングでボールが出ることはなかった。
 DFラインの裏を狙った、その続きをプロの世界で期待したい。

 いよいよ国立競技場での3試合を残すだけとなった90回大会だが、夢の舞台に相応しい熱戦を期待したい。


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