依存

2011 年 12 月 20 日

 壊れた時計のようだった。

 世界的な地位を得ている腕時計がある。
 そのどれもが高価だが、あまりある魅力は興味を示した者の心を掴んで離さない。ステイタスの象徴とも云われ、見栄の為に身につける者さえいる。
 中でも“ROLEX”が代表だろう。世界に星の数だけある時計メーカーの中で群を抜いて人気なのは「売れる」という事にある。どこのどんな国に行ってもROLEXの目利きがいて、どの腕時計メーカーよりも高価で引き取って貰える。
 異国の地で窮地を脱する策として腕時計を売る。時計を売って、お金に変えるという売買の中でROLEXの価値は他の追随を許していない。
 機能によって歯車の数に違いはあるが、いくつもの歯車が噛み合い正確な時間を示し続ける。

 12月18日、クラブワールドカップ3位決定戦、柏レイソル対アル・サッドが行われ90分を0-0で終えPK戦の末、アジア代表のアル・サッドが3位を獲得した。

 欧州王者バルセロナ相手にアンチフットボールにも満たない試合をしたアル・サッドを柏がひねるように勝利し、3位になる。
 日本人の誰もがそんな事を考えたのでないか。
 しかし、サッカーとはやってみなければ分からないもので柏は敗れ、多くの日本人が肩を落とす結果となった。

 柏というチームがこれほどレアンドロ・ドミンゲスを中心に回るチームとは考えもしなかった。あくまで個人的な印象だが、小さなミスから生じるズレをレアンドロがアジャストする、という印象があった。攻撃の1パターンとしてレアンドロが溜めを作った事で酒井宏樹のオーバーラップが生きる。
 故に右からの攻撃は良質なものが多い。

 大きな歯車がいて小さな歯車が円滑に回る。バランスをとり、力の伝達の繰り返しが大きな成果を生んできた。
 この日、大きな歯車を任された水野晃樹に責任はなく「レアンドロがいない時」といったチームマネジメント、リスクマネジメントの欠如は否めない。
 リーグ戦ではレアンドロがいなくとも次節がある。しかし、トーナメント戦では次節なるものがない。

 来季はACL(アジアチャンピオンズリーグ)が待っている。

 決勝トーナメントに出場した場合、レアンドロ不在も起こりうる。不在の中でも多くの好機は作った事は評価できても、結果が出なければ『よくやった』といった慰めにもならない感情論で全てを終わらせてしまう。
 この感情論がチームを、時に個人の向上心を腐らせ、問題点をうやむやにし、言い換えればファンの目をも濁らせてしまう。

 レアンドロのコピーを作る事ではなく、たとえ歯車が小さくなっても工夫がある攻撃を期待したい。J2を制覇し、J1まで制覇したチームなら必ず出来る筈だ。
 この大会を通し、菅野孝憲に大きく助けられた、と言っても過言ではないだろう。J1挑戦一年目で降格してしまった横浜FCのゴールマウスを時に任されたこのGKなしに柏の世界4位はなかっただろう。

 この大会は来季アジア王者を目指す柏にとって世界を知り、チームの問題を浮き彫りにし、来季に向けて最高の経験になった筈だ。
 更に付け加えるならば、過密日程の中で多くの試合を行った「苦しさ」を知った経験は言うまでもなく来季に繋がるだろう。


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