思慮

2011 年 11 月 24 日

 テレビに映し出されるガラガラのスタンドは「アラブの春」の確かな余波を感じさせる。
 そこにはバーレーンのスポーツ界の暗い現実を映し出している。F1界もバーレーンGPの中止を決めた。

 11月22日、ロンドン五輪出場を目指すU-22日本代表は、決して、穏やかとは言い難いバーレーンの地でアジア最終予選2戦目が行われ、2-0で日本が勝利する。

 開始20秒、ドイツから参戦した大津祐樹が獲得したファウルに試合が荒れる様相は確かにあった。ボールを奪われたバーレーンの選手が大津のシャツをつかみ、そのまま押し倒したプレーだ。試合序盤によくみられる、珍しくはないプレーだが、終了の笛が鳴るまで終始続いた 。
 バーレーンは技術が高いチームではなかった。宗教対立により多くの主力が出ていなかったようだが、守備にまわった際の粘りは異常な強さを発揮していた。キレがあった大津祐樹のドリブルの仕掛けに食らいつき、抜かれても追いかける姿にアウェイの意地を感じる。
 プレーが終わっているにも関わらず、体をぶつけてきたり、押したり、蹴ってきたりといったプレーに日本選手たちも野蛮なファウルで応戦してしまう。
 荒れた前半戦ではあったが、終了間際にタッチライン際で大津が粘り、獲得したCKには大きな意味があった。そのCKを相手GKがファンブル、ファンブルに鋭く反応し、体を投げ出し、アウトサイドで合わせたものであった。

 試合前に『結果を出すことにこだわりたい』と語ったコメントを体現したような得点であった。

 後半に入り、中盤の底からのミスパスが増え始め、ピンチに陥る時間帯もあったが、山口蛍が入り安定する。攻撃を仕掛けるパスが目の前のスペースではなく、後方もしくは、選手に出しているシーンが多々あった。この事により攻撃の速度が遅くなったのもあるが、攻めるテンポすら鈍らせてしまった。

 そんな中での後半22分に挙げた東慶悟の追加点は重要さを増した。

 相手に下を向かせる事になったのは勿論だが、この日のバーレーンに2点を返せる力があるとは選手の誰もが考えなかっただろう。
 アウェイでの試合に2-0で勝利したものの、山田直輝の顔を踏みつけられたプレーに多くを学ばなくてはならない。
 苛立ちの反射が、仕返しのようなファウルに繋がり、つまらないファウルの連続の末に呼び込んだ出来事に思えた。前半23分、扇原貴宏も似たようなプレーをしている。山田のように額は切らなかったものの、相手からすれば立派な「わざと」である。
 国の情勢も安定せず、サッカーに集中出来るベストな心理状態ではなかった事、いわばストレスを発散させにくる事は容易に想像できた筈である。
 相手の心理状態を読み、試合に、サッカーに集中出来るように仕向ける事も出来た。
 接触した後に握手を求めた選手はいたか。少なくとも、テレビ越しでみることはなかった。

 それが、いわゆる「国際舞台の戦い」で「厳しさ」というのならば、真剣勝負のW杯の試合中に交わされる握手は何なのか。
 そういったコントロールもあっていい。

 11月27日に国立競技場で行われるシリアとの首位決戦を制すことが出来れば、目指すロンドンへと大きく近づける。
 相手を尊重した上で勝つ。
 これからの日本代表を担う世代なのだから、人間的にも強くなって貰いたい。


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