胡坐

2011 年 10 月 9 日

 0.zeroゼーロ 1.uno ウーノ 2.due ドゥーエ 3.treトレ 4.quattro クアットロ 5.cinque チンクエ・・

 イタリア語の数字である。
 uno・・サッカーに興味を持たなくてもリバースやスキップなど日本人にとって馴染みが薄く、持ち札が最後の1枚になった時に『ウノ』と言わなければペナルティとして持ち札が2枚増やされるカードゲーム「UNO」をした経験をお持ちの方も多いと思う。

 「ウーノ・ゼーロ」

 ベトナム戦のサッカーの試合結果である。
 サッカーに興味を抱く方なら慣れ親しんだ言葉であり、格下が格上相手に演じたのなら敗れたとしても賞賛に値するが、逆に格上が格下相手に演じてしまったのならば、失態と言わざるを得ない。
 10月7日、ベトナムA代表を兵庫・ホームズスタジアム神戸に迎え、4日後の11日に2014年ブラジルW杯予選3次予選タジキスタン代表を迎え撃つ為の強化試合、新戦力の発掘、連携強化、と位置付けされた一戦、の筈だった。
 蓋を開ければ、問題点や課題などと言った謳い文句が生易しい結果となってしまった。
 明らかにトップコンディションには程遠い香川真司を先発起用し目立った場面も少なく逆に不調を浮き彫りにし、案の定、前半のみの出場に終わった。トラップミスも多く見られ、攻撃のアクセントにもならなければ逆にブレーキになってしまった感が否めなかった。ザッケローニ監督は怪我により代表を離脱した清武弘嗣に対し『休む勇気も必要』と告げたのならザッケローニ監督自身も「休ませる勇気」を持って欲しかった。
 指揮官の「伝家の宝刀」とも云われる3-4-3も決勝点の1点に終わり、不発と言い換えても過言ではないだろう。時折、独創性のある攻撃も見られたが結論として3バックの利点を最大限、生かしたい。
 3-4-3はチームの最後尾に3人が残る。最後尾に3人が控えている利点を上手に生かし“4”の左サイドに入った長友佑都の果敢な攻め上がりは目を惹いたが、右サイドの駒野友一の攻め上がりは良いタイミングでは見られず、クロスボールに至っても相手を脅威にさせ、自軍にとっての好機を最後まで作れなかった。
 特筆すべきは最終ラインを形成する“3”にある。攻めて来る相手、俊足FW相手に対しては3バックがDFラインに留まっても致し方ないにせよ、この日のベトナムを相手に3バックが行儀良く並んでいては攻撃の厚みが増す筈もなかった。サッカーとは11人で攻め、守るものである。セットプレーのみの攻撃参加では相手の脅威には最後までなれなかった。
 ベトナムの守備陣の足元の技術は決して高くはなかった。しかし、粘着性のある守備に結局最後まで手を焼いた。欧米の選手を相手にアジリティを生かしたドリブルで抜きさる事が出来ても、同じ体型、アジア人の最大の特徴、同じ長所を併せ持つアジリティのあるベトナム代表を綺麗に抜き去る事が出来たのは先制点を導いた藤本淳吾しか記憶にない。
 先制点の起点となった長谷部誠のパスを藤本がワントラップでスピードアップし、抜き去る技術には粘着力のあるベトナム守備陣も喰らい付く事が出来なかった。受け方もさる事ながら李忠成の藤本を生かす事前の動き、得点までの全体のテンポが素晴らしかった。
 今やアジアのどの国も対日本の場合、構え、ゴール前を固めてくるのは事前に分かっていた。何試合を経ても準備走行の様な3-4-3でスタートするが、慣れ親しんだ4-5-1でスタートし、3-4-3に切り替えても面白いのではないか。
 後半に入っても胡座をかいた様なサッカーを終始し、ベトナム代表の執念の前に結局1点しか奪取出来なかった。ベトナム代表からは「日本代表相手にどこまでやれるか」といった類の執念が感じ取れ、日本代表が格上相手に抱くそれと大きく重なる。

 収穫がなかったわけでもない。ドイツに渡り飛躍的に伸びた細貝のボール奪取能力、藤本淳吾の閃きも今後の日本代表にとって大きな武器になる筈だろう。

 カードゲーム「UNO」において『ウノ』を言えない要因として勝ち抜けする焦りから、が挙げられる。
 焦りから来る失態。
 指揮官は試合後『3-4-3の完成を急いではいない』といった類のコメントを残したが、ここまで結果を残せないとなると、そろそろ雲行きが怪しくなって来たのは言うまでもないだろう。

 今回も日本サッカーの悪しき習慣「お付き合い」をしてしまった感は否めない。来たる10月11日は勿論だが、ただでさえ時間が限られている代表チームの試合で格下ベトナム代表相手にたったの1点しか挙げられなかった事実は近い将来、罰を受ける気がしてならない。「UNO」の様なペナルティを受けない事を心から願いたい。

 「ベトナム相手に・・」「いつか得点が生まれる・・」といった類の、のぼせたチームに常にみられる尊大な様が垣間見え、胡坐をかき失態を演じた感は否めない。
 日本代表が真の格上ならば、格下と目論んだ相手になら格上らしく相手の心まで奪うような戦いを期待したい。

 強き者とは、いつの世も常に貪欲である。

 チーム作りをする際、理想を追い求め続ける勇気も必要だが、日本人の適性に合い、結果を残している現実も必要ではないか。強いベースを残した変化を先ず求めたい。
 それが出来ないのならば、3-4-3など絵に描いた餅と言わざるを得ない。

 10月11日の戦いもまた注意深く見守りたい。


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