醜態

2011 年 9 月 28 日

 代表ではアジア王者に君臨し、クラブチームでは如何なものか。
 笛が鳴った瞬間、3年連続でアジアチャンピオンの権利を失うと同時に2年連続でベスト4にも残れない現実が突きつけられた。

 浦和レッズが「お荷物」と揶揄されてい頃を経験し、記憶している友人がこんな話をしていた。
 『子供ながらにスタンドのおじさんが怖かった、強くなって野次は消え、拍手に変わり、今はまた元に戻りつつある』盛者必衰の理の通り、たけき者も遂には、と云ったところだろう。
 9月27日、アジアチャンピオンリーグ(ACL)準々決勝2nd legが行われ、1-6というスコアで敗れた。

 怪我で出場が心配された清武弘嗣が先発に名を連ね、試合が始まると前線からのチェックからのアフター気味で体を投げ出して来る全北現代モータース(韓国)の守備にセレッソ大阪の攻守の生命線キム・ボギョンが相手のフライングヘッドバットと言い換えてもおかしくないプロレス技を喰らって負傷交代してしまう。
 明らかに確信犯にも見えるプレーもイエローカード止まりに個人的に危うさを感じさせる序盤であった。
 常にアフター気味にくるチェック、普段ならば当然の如く笛が響くプレーなのだが吹かれない苛立ちが画面越しにも伝わって来た。

 『マジかよ』
 口の動きで何を言ってるか読む専門家ではない私にも見て取れる。セレッソ大阪選手達は接触プレーの度に起きる不可解な判定を口にしていた。
 アニマルと揶揄されたアルゼンチンを知らぬ時代に生まれた私にでも分かる醜いプレーの数々であった。
 流血試合、テコンドーサッカーと言い換えても過言ではなかった。
 血を見て萎縮する人間と、血を見ると感情を爆発させる人間がいるのは誰もがご存知の事実である。そんな爆発させる事実もこの日のセレッソ大阪にはどうやら当て嵌らなかった。
 明らかにキム・ボギョンの負傷交代を引きずり、萎縮していた様が見てとれた。チームメイトが潰され萎縮してしまうのも男子に生まれた者として、いかがなものだろうか。勝利への執念はそんなものなのだろうか。
 技術的な部分でも問題点が浮き彫りになったシーンが多々あった。まず挙げられるのがクロスボールの精度。
 長身FW小松塁が投入した際に至っても、立ち止まって味方や相手の位置を確認してからクロスを上げるシーンが多々あった。そのクロスボールを上げても精度が低く相手に危なげなくクリアされるシーンを何度となく見た。アジアを制し、世界に挑もうとするクラブの選手がその程度では正直、話にならないのは言うまでもないだろう。
 バイタルエリアのケアが出来、攻守の繋ぎ役になれるキム・ボギョン不在は確かに響いた。だが、言い換えれば不在の想定を念頭に置いた姿勢の欠如を否めなかったは言うまでもないだろう。
 テンポを変える選手の欠如も否めない。「玉砕」と形容してもおかしくない相手に対し、まともに受けてしまった。相手のペースに嵌り、泥沼に足を踏み入た感はあり、自分達のペースに引き戻す動きが皆無であった。
 それこそがサッカーIQと呼ばれ、高ければ高い程、世界で必要とされる選手だけに突出した選手が見られなかったのが残念でならなかった。
 コーナーキックがゴールキックになり、ルールが変わった様なシーンも確かに見られた。
 勿論、研究されていたし、ハイプレッシャーで前線からチェックを繰り返していけば、と相手も自ずと考えていた筈である。結果的に功を奏して6点を叩き込み圧勝を飾った。特筆すべきはセレッソに比べ、体力的にキツい時間帯も走り回っていた事だろう。
 相手の意気込みが『日本には負けたくない』でも何でも良い。
 その相手に完敗したのが悔しくてならない。

 この結果を受け、協会も真剣に、早急に問題に取り組んだ方が良い。

 もし、荒れたピッチが故に敗れた、とか、審判の笛で敗けた、と考えているのだとしたら危険そのものである。今後、ピッチコンディションをワザと悪くする方法論もある。9月27日の敗戦を真摯に捉え、明日に生かして欲しい。でなければ大阪から韓国に駆け付けたサポーターの気持ちを汲むとあまりに不憫な結果である。
 そして思う、ACLの審判の質を上げないとアジアのサッカーは間違った方向に進む気がしてならない。
 アジアにおいて美しくは勝てない。そのことを痛感させられる試合でもあった。
 2010年W杯決勝戦、パスサッカーに重きをおいたスペインはオランダの度重なるチェックに、チャージに苦しんだ。前蹴りを浴びせた選手はイエローカードで事なきを得た。度重なるチャージに屈せずトロフィーを掲げたのはどちらだったか。
 他国の話だが体型も類似し、パスサッカーを信望しているのならば今、一度思い出して欲しい。

 野蛮な守備や審判の基準を嘆く前に、その中で如何にして勝利を納めるか。
 更なる発展を望むのならば、その事に目を向けた方がずっと前向きというものだ。


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