一歩

2011 年 9 月 17 日

 プロ野球の世界では巨人ファンが圧倒的に多いのは承知の事実である。

 少年時代、テレビを点ければ巨人戦がテレビ中継されており、野球に興味を抱かなかった私は常に『他球団の試合もやればいいのに』と思ったものだ。当時は西武が黄金時代を迎えており、人気があるのは分かってはいるものの巨人戦ばかり放送するのに嫌気が差したものである。地域差は勿論あるのだがプロ野球チームを持たない地方はもっぱら巨人戦を垂れ流していたのは事実である。
 巨人が弱体化し近年に至ってはテレビ放送の打ち切りなどもあり、生粋の巨人ファンは減少の一途を辿っているものの巨人の人気は相変わらず根強い。
 巨人が如何にして巨人になったか。そこにはいつの世も人気選手の存在が挙げられる。特筆すべきは長嶋茂雄終身名誉監督の存在、そして何よりテレビの存在であろう。
 テレビとは「TELEVISION」と記され「テレビジョン」はフランス語の télévision(テレヴィジョン)に由来し、“TV”と略されることも多い。なお、tele- (τηλε) はギリシア語の「遠く離れた」、”vision” はラテン語で「視界」の意味である、とされている。
 つまりは、遠くで起こった出来事を目の前で観る事が出来る、我々にとって身近なメディアである。
 最近の日本では「国や企業の思惑、異国文化のゴリ押しといった悪しき産物」と捉えられ、何度も何度も放送する事によって俗に云う「刷り込み」が起こる。
 スポーツを観戦するのなら感動や歴史的な瞬間こそを求めたい視聴者が多い筈。最近ではアングルに拘った写し方をしており、ファンのみならず、記事にする者、そして長年そのスポーツに携わって来た識者をも唸らせる出来栄えである。
 近年は野球の話になると『昔は巨人ファンだったけど』と多く聞く。新たに好きになったチームの動向を、ある者は携帯に送られて来る中継を見たり、有料の専門チャンネルも存在する、ある者は愛しすぎたが故にスカパー!などに代表される有料放送に加入しチームを見守り続ける。
 欧州のサッカーが好きな者は古くから毎月決して安価ではない契約料金を支払い、週末を各々が楽しみにしている。

 先日、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)ベスト4の座を懸けてホーム・アンド・アウェーの戦いが行われ、ホームのセレッソ大阪が4-3の乱打戦を制した。先制点のアウェーゴールを許してからはサッカーの醍醐味が凝縮された濃い試合展開に多くのファンが酔いしれた事と思う。日本代表戦にも出場し、注目株の清武弘嗣が2ゴールと大活躍し、決して少なくないアウェーゴール3点を奪われたもののベスト4に一歩リードした、と言っていいだろう。
 一方で心残りがある。
 なぜ民法放送では放送されないのか、という事に尽きる。
 承知の通り、ACL優勝チームはアジアチャンピオンの名誉は勿論、今年は12月から日本で開催されるクラブワールドカップ出場権出場の権利も含んでいる。開催国枠は設けられてはいるもののアジアチャンピオンで出場する事と開催国枠で出場する事は天と地ほど意味が違う。
 近年はガンバ大阪以来、日本から優勝チームを輩出していないが今季は日本のチームが優勝出来る可能性が残されているにも関わらず、である。『欧州チャンピオンズリーグ(UCL)は観るけど・・』とはよく聞くが、いかがなものか。
 好き嫌いは勿論あっていい。
 しかし、本当に日本にサッカー文化が根付いて欲しいのならば、大事な、重要な試合はLIVE中継は出来ないものか。
 地方出身者に多くみる巨人ファンはテレビ放送の刷り込みがもたらした賜物だと私は現在でも考えている。そこからアンチ巨人が生まれ、放送がなくとも他球団を応援し始めたファンを多く知っている。
 日本サッカーにおいて日本代表戦ばかりがクローズアップされる所以は、代表戦ばかりをLIVE中継する事にある。ナショナリズムを大いに煽り、試合までの数日は代表情報満載で各局が放送する。『ワールドカップは観るけど』や『日本代表戦は観るけど』などは刷り込みが生み出した最たる例であろう。
 ならば、日本のクラブチームがアジアチャンピオンになる動向に注目しても良い時期に来ている。なでしこジャパンはワールドカップを機に天と地ほど違う待遇を手にした。それは間違いなく彼女たちの掴んだ栄光に他ならない。フィーバーなるものは何回も繰り返し放送する事によって起きるものならば、ACLの重要性を説いた番組構成をしている番組があっていい。ビジネスチャンスと捉えても差し支えない。
 アジアを軽視する姿勢が目立つ昨今だが、アジアのレベルアップなしに日本サッカーの進化はない。強い集団で競い合い才能はより磨かれる事は何の世界にでも当て嵌まる事実である。

 UCLの持つ魅力の一端に注目がある、近年は世界最高峰の大会に日本人選手が出場する高揚感、高い個人技、高い戦術を楽しみに多くの日本人が胸を焦がす。多くの者が好きなチームを応援する一方で歴史を知り、ジンクスや人間模様を知り、試合を観戦し大会を楽しんでいる。
 ACLが如何に重要で、この大会を制する事が如何に日本サッカー界の為になるのか、を伝えたならば、皆が云う世界に近づける。小さな一歩かも知れないが、その一歩が前進する事を心から願いたい。
 そして思う。
 いつまで欧州を羨望の眼差しで見続けなればならないのか、と。

 突然変異で世界レベルの選手は決して生まれない。
 アジアを制した事のあるジュビロ磐田、浦和レッズ、ガンバ大阪から何人の日本代表中心選手が生まれたか。今一度、考え直す時期が来ている気がする。
 セレッソ大阪には日本サッカーの環境を変える着火剤に起爆剤になることを心から望む。


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