2011 年 9 月 12 日

 何事にも分岐点がある。
 横文字を用いるのならターニングポイント。そのターニングポイントを間違った方向に進んだのならチームは低迷し、欲しいものも手に入らなくなるものである。
 昨季のユベントスの戦いを毎試合観て、思った率直な感想である。

 ストライキにより開幕が遅れていたイタリアセリエAが先週末開幕された。
 昨季王者ミランがホームで引き分け、ナポリがアウェーで快勝し、長友佑都が在籍するインテルが敗れ、名門ローマも敗れるといった開幕戦であった。
 ここのコラムでも記したが(貴婦人)20数年来のユベントスファンである。贔屓目にみても圧倒的に試合を凌駕した開幕戦に私には映った。
 昨季は開幕戦で敗れ、その後は建て直したものの年が明けてからはパフォーマンスも順位もズルズルと後退してしまう。怪我人が相次いだ事もあるが、首を傾げたくなる試合展開、選手起用を繰り返し、終わってみればヨーロッパの舞台にも出場出来ない事は名門にとって失態と言っていいだろう。
 個人的にターニングポイントとなった試合はイタリアダービーと呼ばれるインテル戦にあった。開幕戦で昇格組のバーリに敗れ、格下に引き分け、もしくは敗れてしまい、終了間際の同点、逆転も珍しくなかったデル・ネーリ前監督が崖っぷちで挑んだインテル戦で危険な場面を作られるも、勝利してしまう。
 チームが勝利して悔しい思いをしたのは後にも先にもあの1戦が初めてである。
 ユベントスに限らず、チームの首脳陣にとって「見切り」はシーズン中に最も大事な仕事の一つ。その「見切り」に失敗すると残留を目指しているチームならば降格の確率は上がり、優勝を目指しているチームならば下位のチームに敗れた時点で早急に動けないとなるとマネジメント能力をつい疑ってしまう。
 自国のリーグで充実した戦いが出来ないチームがCLやELの舞台で大成するとは、とても思えない。

 ご存知の通り、単に首の挿げ替えをするだけではチームが再び蘇るわけではない。
 シーズン中の解任ならば、稀代の戦術家よりも選手のモチベーションを挙げられる優れたモチベーターである監督が適任であり、欲を言えばチームのメンタリティを骨の髄まで知るクラブOBが適任である事に異論を挟む者は皆無であろう。
 名門と呼ばれるチームならば、優秀な実績も人望も併せ持った元選手がいる。昨季欧州一に輝いたバルセロナを見た場合、大きく頷ける事実である。

 腑抜けになったユベントスに“強かった頃”の古き良き魂を持ったアントニオ・コンテが監督として帰って来たのは朗報である。
 毎試合のように試合を観る頃になってから実のところコンテの記憶は少ない。思い出されるのは02/03CL決勝戦で放ったヘディングシュートがポストを叩いた位である。10年以上チームに在籍しながら、コンテに対してはそのシーンしか思い出せない。
 ここ10年、デシャン、ジダン、ダービッツ、ネドベドなど選手に代表される輝くものは決してなかった。強かった頃のユベントスには言葉を悪く言うのを許して貰えるのなら、試合に出ているか出ていないか分からない選手達がいた。輝ける選手の為に黒子役に徹し輝ける選手を、より一層輝かせる選手が数多かった。タッキナルディ、ペソット、ビリンデッリ、古くはディ・リーヴィオが当て嵌まる。
 優秀な主役がいて主役を輝かす術を知る脇役がいる、その上、優秀な監督がチームを率いて弱くなるわけがない。
 プラティニがチームを去ってからスクデットから遠ざかり、再びチームにスクデットを取り戻したのは他ならぬリッピである。就任当初エースだったバッジョを怪我で欠いたの機にチームの方針を大きく変えた。イタリアでは当時珍しかった4-3-3を採用し個に頼るのではなく11人の走力を生かした攻守の切り換えに重きをおいた結果が優勝でありチームに再び魂を吹き込んだ。当時若干20歳のデル・ピエーロもチームの躍進を大きく助けた。93/94のスクデットを機にチームは再びかつての常勝軍団に戻った。
 常勝軍団を作り、率いたリッピ、アンチェロッティ、カペッロを知る現監督コンテについつい期待してしまう。

 『攻撃的かつ圧倒的であれ』

 というスローガンを掲げ4-2-4という60年70年代まで遡らなければならないシステムでチームを指揮する。開幕前、ガゼッタ・デロ・スポルト紙からは『まるで小学生』と酷評されたが開幕戦はパルマに何もさせずに4-1といったこれ以上ないスコアで上々の滑り出しである。
 パルマが弱かったのか、それともユベントスが強かったのか、次節で証明して欲しい。この試合まずまずのパフォーマンスを見せたデ・チェリエが終了間際PKを与え、レッドカードを受けた為に次節出場出来ない。懸念された左サイドバックで誰を使うのか、コンテの腕の見せ所である。

 この日ユベントスのスタジアムは慣れ親しんだデッレ・アルピからユベントス・アリーナと姿、形、名を変え、初の公式戦を迎えた。3年ぶりのホームスタジアムで4点を叩き込み、監督も、選手も、首脳陣も、ファンも、誰もが納得の試合であったのは言うまでもない。与えたPKを決めた選手がユベントスからのレンタル中の選手であり、ユベントスの将来を担うであろうジョビンコなのも何か意味がある気がしてならない。

 93/94シーズン、85/86シーズン以来の優勝を果たした。92/93シーズン優勝チームがミランという事もまた面白い。
 今季は例年になく楽しみなのは確かである。


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