伏兵

2011 年 9 月 1 日

 素晴らしいタイミングでマークを外してフリーになり、胸トラップからゴールネットを揺らした青年がいた。

 少し手が上がっている様には見えるものの不可解な判定でハンドと判断されノーゴールになってしまう訳だが、多くのファンのハートを掴んだ瞬間だと思う。2007年のU-20ワールドカップでのグループリーグ第3戦、ナイジェリア戦での幻のゴールが未だ鮮明に記憶に残っている。
 スコットランド、コスタリカに連勝した日本はナイジェリアとの消化試合をサブ組中心で挑んでいた。そのサブ組に彼はいて、多くの方が香川真司という選手を初めて知った瞬間だったのではないだろうか。

 2014年ブラジルW杯3次予選を9月2日に控えた日本代表に主力の怪我人が続出している。本田圭佑に続き久しぶりの招集となった中村憲剛も離脱という形となった。

 意識調査によると予選を『突破出来る』の答えに91%の支持を得ている。その反面で『日本が初戦を落とせば大混戦となる』と唱える識者もいる。「本田が抜けたトップ下に誰が?」といった話題もあるが、そういった想像もサッカーの面白さの一つでもある。
 主力が出れない、怪我をした、といったアクシデントは日本代表として出場機会の少ない選手達にとって大きなチャンスとなる事は言うまでもないだろう。与えられたチャンスを生かすのも才能であるし、そういった選手の台頭も今後の厚い選手層を作り上げる為にも必要不可欠でもある。
 ザッケローニ監督に嬉しい悩みを与えたいものである。8月に韓国に3-0で快勝した時、スタミナのある岡崎慎司が負傷しなければ清武弘嗣の出場は果たしてあっただろうか。
 「人の不幸は蜜の味」とはよく云われているが、残酷なくらいにスポーツの世界では当て嵌まる。与えられたチャンスを生かす事、その瞬間に備える準備、腐らず、いつか来るその日の為に努力し続けられる者だけが次へ行くことが許される。
 
 香川真司も無名選手から世界に羽ばたいていった。
 南アフリカW杯をサポートメンバーとして帯同した選手がドイツでの躍進を一体何人の日本人が確信出来たか。同時期イタリアに渡った長友佑都にも同じ事が言える。
 選手は与えられた時間、やって来るチャンスで結果を残せるか否か。
 FIFAランクや過去の実績などを鵜呑みせず、相手を見下さず、日本の目指す方向性に値する能力、日本代表の一員としての誇りを感じさせるか否か、を見定めるのもファンの仕事でもある。
 8月10日の韓国戦終盤にみられた粗さが出る様なら叱咤できる目線を持つのはメディア“のみ”のものではなく、ファンのものでもある。
 真の強き者とは、いかなる場合、いかなる相手にも決して手を抜かないものである。

 そして思う。
 スターとは予期せぬタイミングで出て来るものである。
 明日に期待したい。


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