剣呑

2011 年 8 月 25 日

 FIFAは8月24日、最新のFIFAランキングを発表し、前回16位だった日本はランクを1つ上げて15位となった。

 要因として8月10日に行われた韓国戦で3-0と快勝した影響を色濃く反映されたランキングなのだと思う。
 ザッケローニ政権下になって日の浅い昨年10月にアウェーで対戦した際にスコアレスドロー、今年1月のアジアカップでPK戦の末に勝利する。
 「アジアのクラシコ」と世界から賞賛され、一進一退の攻防を期待した試合は、魂を焦がすような、しのぎを削る戦いを札幌の地では遂には見られなかった。
 ホームかアウェーなど皆無の実力差、戦術差がスコア以上の結果で試合を終えた。

 日本人以外が見てもアジアのライバル同士の戦いには見れなかったのでは、と思うのは当然だろうし、第三者が見た上でのランキングアップなのだと私は考えている。
 無論、韓国にも絶好のチャンスはあった。しかし、サッカーというスポーツはゴールが決まらなければ結局のところ「惜しい」やら「チャンスは作った」といった慰めの言葉で終わり翌日は「惨敗」という文字が紙面を踊って来た。その後は「決定力不足」の糾弾が待っている。
 今まで日本が味わったそれを現在は韓国が味わっている。今までなら、まかり通ってきた幼稚な言い訳も韓国の若者達の糾弾によってかき消されている。
 『負けは負けでしょ?』
 『負けを素直に認めなければ韓国サッカーの未来はない』
 といった耳を疑う様な、今までの韓国なら考えられないコメントが日本まで届く。
 良い時代の流れを感じつつ、従来の悪い流れを変えられない、そして今後の日本の課題とも云える問題が浮き彫りにもなった試合でもあった。

 「海外組」である。

 韓国戦前、海外組が来日する前の札幌合宿では苛立ちを隠せないザッケローニがそこにはいた。カメラに納められたその顔にいささか疑問符が残った。
 漫画のように吹き出しを入れるなら『何やってんだよ』がしっくりくる、そんな表情であった。
 当然、本田圭佑は本田圭佑である。香川真司も然りである。
 ザッケローニと過ごした時間も違ければ、選手の能力も経験も勿論違ってくる。型に当て嵌めるやり方から、そろそろ脱却して貰いたい。

 日本代表に夢を抱き、志半ばで病に倒れたイビチャ・オシム前監督はかつて『海外組を何故呼ばない』という質問に対し『日程面の違い』と『地理的不利な環境』を例に挙げ、給料を払うクラブ側にも立った『選手に給料を払うのは協会ではなくクラブ』といったコメントを述べた。

 25日、埼玉スタジアムで9月2日に行われるW杯アジア3次予選、対北朝鮮戦、そして6日にパフタコールで行われるウズベキスタン戦に臨む日本代表メンバー23名が発表された。
 海外組が12人、国内組11人となった。
 選ばれた12人の海外組の中で一体何人が現段階でトップコンディションで試合に挑めているのだろうか。香川を例に挙げると顕著に映る。前線で頑張れるバリオスを怪我で欠いているとはいえ、移籍をしたシャヒンの穴を埋めきれず攻撃に昨年程の迫力が見られない。まだまだシーズン序盤とはいえ、昨年程のインパクトを感じさせない戦いぶりなのは誰の目にも明らかだろう。
 日本人なら毎試合「香川に輝いて貰いたい」と考えている筈だがブンデスリーグ前半期MVP選手をマークしない相手など皆無。その状況を乗り越える術を香川自身が身に付けてこそ選手として次世代の階段を上がって行けるものだと私は考えている。
 代表で良い結果を残せても移動で疲弊し国内リーグで良いパフォーマンスを残せなければ、先発を、最悪チームを追われる立場にもなりかねない。

 毎試合、代表戦で海外組を呼び寄せ、練習を行い、試合を戦い、熟成させていくのはチーム作りとしてのやり方としては決して間違いではない。しかし、選手を疲弊させ、所属チームでトップパフォーマンスで試合に出場し、確かな結果を残さなければ海外移籍など徒労ではないだろうか。
 勿論、疲れを感じさせずに毎試合に出場し、結果を残せる程の選手を期待したいが、その期待は危険そのものに映る。

 ザッケローニが抱くチームという型に選手を当て嵌めるやり方ではなく、1.5軍もしくは2軍と呼ばれようがアジアでの戦いは国内組で挑み、練習や試合で海外組を例に挙げ『彼はこうしているよ』とアドバイスする手法を取るやり方もあって良い気がする。
 その状況こそ選手を奮起させ、ひいてはJリーグのスキルアップ、集客アップにも繋がる筈である。
 海外組を招集し、試合に挑むのならブラジル、アルゼンチンなど強豪国のやり方にみられる欧州での試合もあって良い筈。

 現在、日本代表を率いているアルベルト・ザッケローニはイタリア人である。イタリアの地で30年弱、監督業をやっていてイタリアにコネクションがない筈がない。
 2014年ブラジルW杯は3年後である。監督も協会も無敗記録に酔いしれているとしたら危険そのものである。
 そしてアウェーでの強豪国との対戦に胸踊らないファンはいるだろうか。
 無論、勝ち続けるのは協会も、監督も、選手も、ファンも、気持ちが良い。

 だが、いつの世も良薬とは苦いものである事を忘れてはならない。


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