献身

2010 年 8 月 12 日

毎年、毎年、飽きもせず楽しみにしている。
日本の夏の風物詩。

甲子園である。

「筋書きのないドラマ」「怪物」最近では「王子」。
話題には事欠かない。
私の世代で「怪物」といえば松坂大輔の名が思い浮かぶ。
PL学園との死闘。準決勝での大逆転。決勝戦でノーヒットノーラン。そして春夏連覇。
本人が現役の為、松坂大輔のエピソードや裏話をこれからも知る事となるだろう。
松坂大輔が光を浴びる中、光を浴びなかった高校野球児も存在する。
敗れたPL学園の選手の話を聞いた時は驚いたと同時に微笑ましくもあった。

私は桑田真澄が好きだ。
だが、PL学園時代の試合を見た事はない。
勿論、K・Kコンビも見た事もない。
ただ、どれだけ凄かったかは知っている。

甲子園を見ているとまず、選手の身体が大きい。
180㎝を超える選手がザラである。
だが、桑田真澄は174㎝しかない。
野球を知っている方なら、分かり切った話なのだがピッチャーというポジションをやる上で身体が大きい方が絶対有利である。
だが、1年生からPL学園のエースとして甲子園を何度か制覇している。
『才能があった』と言うのは簡単な話。

PL学園に入学して桑田は清原和博をはじめ、同級生の身体の大きさに驚愕する。
だが桑田は『彼等は彼等、俺は俺』と割り切り『俺らしさを出そう』と考える。
PL学園の教えに「献身」という言葉がある。
「けんしん」と書いて「みささげ」と読む。
同級生達が『何が献身やねん、こんなんやったって野球はうまくならんよ』と言う中、桑田は進んでトイレ掃除、草むしりを進んでやる。
誰が考えても、トイレ掃除をやっても草むしりをしても、野球の技術向上と何の因果関係もない。
だが、桑田は進んでやる。
同級生がサボる中、桑田は『代わりに俺がやるよ』という位、徹底してやった。
桑田自身はこれを「裏の努力」とよんでいる。

すると不思議な事が起きる。
実力は対して変わっていないのに、マウンドで投げると打球が全部野手の正面に飛ぶ。
打席に立つと真ん中にボールが来る、打てばヒットになった。

この話を信じるか信じないかは貴方次第なのだが、私は信じる。

何故ならどんな物事であっても、それだけやっていれば上手くなる。とはとても思えない。

甲子園をテレビ観戦していると、微笑ましいニュースが届く。
番組宛に選手の下宿先の近隣住民から『毎朝、元気に挨拶してくれる、きっと良いチームなんだろうな、テレビの前で一生懸命応援してます』といったメールが、ほぼ毎試合届く。
人間関係が希薄になった現代社会からすれば、驚くべきニュースに思う。

甲子園の歴代スターに才能があったのには間違いない。
その才能を持った人間が努力をする。
表の努力。裏の努力。

裏の努力を出来る人間こそが後世まで名を残し、伝説と云われる選手になる。

桑田真澄が伝説と云われるエピソードがある。
桑田真澄は早稲田大学に行って、巨人のエースになるという夢があった。
だからこそ、甲子園でストレートとカーブしか投げなかった。
紅白戦やシート打撃の時、遊びでスライダーやフォークを投げたら誰もバットにかすりもしない。
それを知っている清原和博は甲子園でピンチになるとタイムをかけ『桑田、スライダー投げろよ。絶対空振りやで』と告げる。
桑田は『投げへん』と返事をすると『お前らしいなあ』と言い、一塁に戻って行った。
目先の1勝よりも未来に繋がる1勝を高校生の頃から考えていた。

夢や目標を何処に立てるか。
そのそれこそが豊かな人生を送る術に私は思う。

熱戦が続く第92回全国高校野球選手権大会を興味深く拝見したい。


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