葉月

2011 年 8 月 19 日

 多くの日本人にとって8月という月は重苦しい。

 唯一、救われるのが甲子園であると思う。激闘が続く試合も残り3試合になってしまった。
 日本の夏の風物詩であり、大人になり故郷を離れた者でもついつい故郷の活躍に想いを馳せる甲子園という名の興奮。

 昨年、沖縄県勢初の悲願の甲子園制覇を成し遂げた沖縄県代表興南高校の活躍を記憶している方も多いと思う。沖縄県に渡るのにパスポートが必要だった昔、甲子園の土が検閲で引っ掛かるが故に帰りの船の上から甲子園の土を海に捨てたエピソードを聞いた時の後味の悪さは未だ消える事はない。
 怪物伝説の真っ只中にいる興奮、サヨナラで決まる勝負が決する延長戦に固唾を飲む緊迫感、野球ファンでなくとも『高校野球は毎年観る』という方がいるのも頷ける。
 『今大会は白熱する延長戦が多い』と多くの方が言う。
 それもその筈で、現在8試合行われており
 聖光学院 5x
 日南学園 4

 明徳義塾 3x
 北海 2

 鳥取商 2
 白樺学園 3x

 如水館 3x
 関商工 2

 横浜 6x
 高崎健康福祉大高崎 5

 白樺学園 7
 智弁和歌山 8x

 関西 3x
 九州国際大付 2

 如水館 3x
 能代商 2
 で、大会タイ記録と並んでいる。
 残る3試合の内、1試合でも延長戦に入れば大会新記録樹立である。
 しかし、熱戦に水を差すようだが延長戦に入る前に勝敗を決められるシーンは大いにあった。「バッティングは水もの」と云われている野球というスポーツだがバントは練習量の賜物と表される。大事な場面で打てなくとも致し方ないがバントミスで追加点を奪えなかったり、判断ミスでピンチを招いたり、と確かな実力を持ちながら勿体無いミスで甲子園を後にするチームが多く目についた。
 どのスポーツにも共通すると思うがミスを多くしたチームは負ける可能性が高くなる。どのスポーツでもミスを少なくする方法は練習でしか補えないのも、また事実である。

 甲子園の歴史は眩い様で残酷でもある。

 過去に甲子園の連投が響き、甲子園以後の野球人生を奪われた甲子園球児が確かに存在し、俗に云う「甲子園の光と影」が確かに存在する。甲子園で闇を味わった者が将来になり光を浴びる球児がいる一方で甲子園で光を味わった者が将来で不祥事を起こし、闇を味わう者がいる。高校時代に無名の選手がプロの世界に行き、名監督の尽力で世界一有名な日本人選手になった者もいれば、甲子園という舞台で5打席連続敬遠を経験した者が世界一有名なチームに在籍しワールドシリーズMVPになりチャンピオンリングを手にする事を誰が想像出来ただろう。
 その後、松井秀喜は敬遠したピッチャーとテレビ企画で対談を行い、開口一番『ありがとう。あの経験がなければ現在の僕はなかった』と感謝を述べている。
 それは選手の懐の深さによるかも知れないが甲子園の持つ美しさの一つだと私は考えている。

 残る3試合、新記録樹立を期待しつつ記憶に残る試合を期待したい。


 大会が第93回にもなれば人々が記憶する数々の名勝負がある様に闇に葬られた記録もある。戦争により大会公式記録には残らなかった「幻の甲子園」と呼ばれた甲子園も過去にはあり、「昭和十七年の夏 幻の甲子園 戦時下の球児たち[早坂隆 文藝春秋]」は個人的に心打たれる作品の一つである。

 もし、あなたが残る3試合に満足出来なければ是非読んで頂きたい。甲子園の映り方が全く異ってくる。

 暗い出来事ばかりの8月だからこそ甲子園だけは明るい話題を届けて欲しい。それこそが亡き先人達へ何よりの供養になる。これからも先人達を喜ばせる試合、混沌とした現代を生きる我々の活力になる試合を切に期待したい。


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